AIがサイバー攻撃に使われている?Anthropic創業者が認めた「不都合な現実」

AIがサイバー攻撃に使われる時代が来ている──「可能性がある」とAI開発企業が認めた

スマホやパソコンを使って仕事をしている人なら、「フィッシングメール」や「不正アクセス」といったニュースを一度は耳にしたことがあるでしょう。そしてここ数年、そういったサイバー攻撃の件数はじわじわと増え続けています。そこへさらに「AIが悪用されているかもしれない」という話が、AI開発の最前線にいる人物の口から語られました。2025年10月、世界有数のAI企業・Anthropicの共同創業者が初めて来日し、日本のメディアに向けてその可能性を率直に認めました。これは「AIの話」ではなく、私たちのデジタルな日常生活に直結する問題です。

そもそもどういうこと?

Anthropicのロゴや本社オフィスを表すイメージ写真
画像提供: Anthropic(www.anthropic.com)

Anthropic(アンソロピック) は、「Claude(クロード)」というAIアシスタントで知られるアメリカのAI企業です。OpenAIの元メンバーたちが設立した会社で、AI安全性(AIが社会に害を及ぼさないようにする研究)を特に重視していることで知られています。

その共同創業者のひとり、ジャック・クラーク氏 が2025年10月に初来日。日本法人が開いたメディア向けの説明会で、報道陣からサイバー攻撃とAIの関係について問われ、次のように述べました。

「おそらく、AIツールが使われている可能性はあるだろうと推測している」

少し遠回しな言い方に聞こえるかもしれませんが、これは非常に重みのある発言です。なぜなら、AIを作っている側の人間が「自分たちの技術が悪用されているかもしれない」と公の場で認めたことになるからです。

わかりやすくたとえると、包丁メーカーの社長が「うちの包丁が犯罪に使われている可能性はゼロではない」と認めるようなもの。それほど正直で、かつ責任ある発言といえます。

なぜ今これが注目されているのか?

AIはサイバー攻撃の「敷居」を下げてしまう

従来のサイバー攻撃は、プログラムの知識を持つ専門家(ハッカー)でないと難しい行為でした。しかしAIツールが普及した今、技術的な知識がなくても「AIに聞けば攻撃の手順が分かる」という状況が生まれつつあります。

たとえばフィッシングメール(本物そっくりのニセメールで個人情報を盗む手口)は、文章を自然に書くのが難しく、かつては日本語のぎこちなさで見破れることも多くありました。しかし 高精度の文章生成AIを使えば、誰でも自然で説得力のある偽メールを大量に作れる ようになります。これが「AIが攻撃の敷居を下げる」ということです。

「可能性がある」と言えることの重さ

クラーク氏の発言は断定ではなく「推測」にとどまっています。しかしこれは誤魔化しではなく、正直さの表れと見ることができます。AI企業がサイバー攻撃との関連を認めることは、社会的な信頼を失うリスクもある。それでも語ったのは、問題を隠さずに向き合う姿勢の表明ともいえます。

Anthropicが取り組む「悪用抑止」の方針

今回の説明会では、悪用を防ぐためにAnthropicがどういう方針をとっているかについても語られました。同社はAI安全性を会社の中心的なテーマとして掲げており、モデルが有害な情報を出力しないようにする「ガードレール(安全柵)」の整備を継続的に行っています。ちょうど車道にガードレールがあるように、AIの出力にも「ここから先はいけない」という境界線を設ける取り組みです。

ただし、完全に防ぐことは現時点では難しく、企業・研究機関・政府が連携してこの問題に当たる必要があるという認識も示されています。

AIが盾と剣の両面を持つイメージ。守りにも攻めにも使えることを象徴するイラスト

わたしたちにどう関係する?

「サイバー攻撃とかAI悪用とか、自分には関係ないかな…」と思った方、少し待ってください。

会社員・社会人の方へ: 職場に届く業務メールの中に、AIで精巧に作られたフィッシングメールが混ざり込む可能性が高まっています。「取引先から」「社長から」と見せかけた偽メールで添付ファイルを開かせる手口は、すでに多くの企業で被害が出ています。AIの普及でこれがさらに巧妙になる可能性があります。

学生・若い世代の方へ: SNSアカウントへの不正ログインや、個人情報を狙ったアカウント乗っ取りもサイバー攻撃のひとつ。自分が被害者になるだけでなく、知らぬ間に踏み台にされるケースもあります。

日常生活全般: ネットバンキング、ショッピングサイト、各種アプリ──私たちが使うほぼすべてのオンラインサービスはサイバー攻撃の標的になり得ます。AIがその攻撃を自動化・効率化できるようになれば、被害の規模が拡大するリスクがあります。

「AIは便利なだけのもの」という認識を、そろそろアップデートするタイミングかもしれません。

気をつけたい点

「AIが攻撃している」と単純化しすぎない: クラーク氏の発言はあくまで「可能性がある」という推測です。AIそのものが自律的に攻撃しているわけではなく、人間がAIを道具として使っているという構図を正確に理解することが大切です。

すべてのAI企業が同じ姿勢ではない: Anthropicはとりわけ安全性を重視する企業として知られていますが、世界には安全対策が不十分なAIサービスも存在します。使うツールを選ぶ目を持つことが重要です。

「完全に防げる」とは思わない: どんな安全対策も100%ではありません。企業側の取り組みを信頼しながらも、個人レベルでのリテラシー(怪しいメールを開かない、パスワード管理をしっかりするなど)を高めることが引き続き有効です。

情報は日々更新される: AI技術の進歩は非常に速く、今日の「現状」が半年後には変わっている可能性があります。一度学んだら終わりではなく、定期的に情報をアップデートする習慣をつけましょう。

よくある質問

Anthropicって何をしている会社?

  • ●「Claude(クロード)」というAIアシスタントを開発・提供している米国のAI企業
  • ●OpenAIの元メンバーが創業に関わった
  • ●AI安全性の研究を会社の中核テーマとして重視している
  • ●2025年10月に日本法人が設立済みで、今回はその日本法人主催の説明会が開かれた

ジャック・クラーク氏はどんな人?

  • ●Anthropicの共同創業者のひとり
  • ●今回が初来日で、日本のメディア向けに講演・質疑応答に応じた
  • ●サイバー攻撃とAIの関係についての質問に対し、率直にコメントした

AIがサイバー攻撃に使われているという証拠はあるの?

  • ●クラーク氏の発言は「推測」であり、断定はしていない
  • ●具体的な証拠・件数などについて、今回の素材には記載がない
  • ●「可能性がある」という認識を示したことが、今回の発言の主旨

Anthropicはどうやって悪用を防ごうとしている?

  • ●AIが有害な情報を出力しないようにするガードレール(安全策)の整備を継続的に実施
  • ●企業・研究機関・政府との連携が必要という認識を示している
  • ●ただし、完全防止は難しいという点も正直に述べている

普通の人がこの問題に対してできることはある?

  • ●素材の範囲では、Anthropic側の取り組みについての説明が中心であり、一般向けの具体的な対策方法は今回の素材には含まれていない

まとめ

AIが便利な道具であると同時に、サイバー攻撃の手段になり得るという現実 を、AI企業の創業者自身が認めた──これが今回の発言の核心です。Anthropicはその抑止に向けた取り組みを続けていますが、「完全な防御」はなく、私たち一人ひとりのリテラシーも問われています。次のステップとして、「フィッシングメールの見分け方」や「パスワードの管理方法」といった日常的なセキュリティ対策から、ぜひ見直してみてください。

参考文献